○ メンタルヘルス不調と対応の判断基準

職場において問題のある言動を繰り返す従業員に対し、企業が対応する上で重要な判断基準が2つあります。 

 

1つ目は、「事例性」「疾病性」による判断。

 

2つ目は、「業務起因性」です。

 

 

1.「事例性」と「疾病性」

 

メンタルヘルス法務では、この2つの基準が重要になります。

 

事例性とは、「仕事をする上で支障が生じている事実」です。

 

疾病性とは、「精神疾患等が疑われる事実」です。

 

例えば、協調性の欠如、不安全行動、遅刻やミスの増加、身だしなみの乱れ、その他、従前の行動様式とのズレなどが該当し、個別の事実から判断していきます。

 

しかし、精神疾患等についての最終判断は医師にしかできませんので、精神疾患等の可能性を視野に入れつつ、事例性に注目した対応が求められます。

 

具体的には、精神疾患等の可能性に配慮しつつ、仕事上の支障について本人と話し合い、必要に応じた受診勧奨、明らかに個人の人格によるものであれば、粛々と注意、指導、懲戒処分を行うといった対応となります。

 

 

2.「業務起因性」

 

業務起因性とは、「仕事に起因する不調かどうか」です。

 

精神疾患等の可能性がある場合に、企業として考えなければならないのが、業務上災害(労災)か、私傷病か、ということです。

 

労災か、私傷病かによって、当然、対応が異なります。

 

労災だった場合、企業の安全配慮義務違反による損害賠償、休業補償(労災補償額と給与満額との差額)、解雇不可(期間満了で退職となる一般的な休職制度適用不可)などが問題となる可能性もありますので、しっかりと勤務状況、人事異動等職務上の大きな変化、人間関係などの状況を把握しておく必要があります。

 

もちろん、日頃から仕事に起因する不調者を出さない取り組みが重要ですし、安全配慮義務により、上記の状況把握、未然防止の積極的対応が求められていると言えます。

 

 

ごく簡単に説明しましたが、上記2つの判断基準から、臨機応変の対応が求められます。